+ ACT.01  出会いのとき ( 2/2 ) +
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「お前……誰だ?」

斎は、いきなり上から降ってきたその塊―
もとい、蒼髪の少年に尋ねる。

「んなごどどーでもいーがら早ぐどげでーーー…!」
今にも窒息死しそうだから助けてくれと言う勢いで、1番下にいるパースが半泣き状態で喚く。
「そっ…そうですよ斎さん!パースさん、潰れちゃいます…!」
優斗はボケッとしている斎にそう声を掛けると、慌てて3人の少年の元に駆け寄る。
「― あっ……ああ!悪ぃ!」
漸く斎も目を覚まし、3人の元に駆け寄ると、手早く山を崩し、3人を救出する。
「あだだだだーーー骨折れたーーー!」
「俺なんて内臓破裂したーーー!」
救出されるや否や、ぎゃんぎゃんわんわんと喚き散らすアンスズとパース。
「ただの掠り傷しかねぇくせに喚くな!」
先程から喚く2人の声があまりに耳障りだったのか、斎は怒鳴る。
「斎さん……」
優斗は、一通りアンスズとパースの怪我の状態を見、特に大した怪我が無い事を確認すると、喚き散らす2人とは正反対で、全く言葉を発しないまま壁に寄りかかっている蒼髪の少年を見、そして斎へと視線を移す。
「…お前、怪我無ぇか?」
斎は、少々警戒しながらも、ゆっくりとその少年に近付きながら尋ねる。
「………」
少年は、その問いには答えなかった。
それどころか、斎の存在さえも無いかの様に、ピクリとも反応を示さなかった。
「人が心配して声掛けてんのに、無視ってのは失礼なんじゃねぇの…」
そんな少年の態度に少々イラっときた斎は、少年の肩を強く掴み、自分の方に顔を向けさせる。

「― 痛ぅっ………!」
すると、少年はビクッと体を反応させ、微かな声を漏らす。
「―ってお前、怪我してんじゃねーか…!」
斎は、少年の反応で離した自分の掌を見ると、目を見開く。
掌には、ベッタリと紅い血が付いていたのだ。
「斎さん、この血の量…ちょっと危ないんじゃ…!」
優斗は斎の反応を見ると、慌てて少年の下へ駆け寄ると、直ぐに怪我の状態を確認し、斎に言う。
「んだよお前!いきなり空から降ってきといて自分1人だけこんな怪我してんじゃ世話がねぇじゃねーか!」
斎は真剣な表情でそう言うと、怪我の状態を確認する為、少年の袖を捲ろうと手を伸ばす―

「―っ!止めろ…!」
少年は、急に表情を変え、慌てて斎の手を振り払う。

「何だよお前…折角人が親切にしてやってんのにその態度はねぇだろ」
そんな少年の態度に、益々イラつき始める斎。
「でっ…でも貴方、その怪我っ…」
優斗はそんな斎にビクつきながらも、少年の傍に駆け寄り、声を掛ける。
…「この怪我は、さっきので負った怪我じゃない。…放っておいてくれ。」
斎や優斗の善意を拒絶するかの様に冷めた口調で言うと、少年は、腰に付けたポーチから黒いケースを取り出し、中から薄い小型のディスクを取り出す。
「…?」
優斗はそんな少年の様子を見、首を傾げる。
「……割れてない……」
そのディスクを見るなり、少年は、幾分表情を和らげる。

「こっちの方で餓鬼見たらしいぞ!探せ!」
「―っ!」

急にバタバタという騒がしい足音が聞こえたかと思うと、例の男達がこちらにやって来た。
「んあー?」
「さっきの奴等だー…」
少年の事は斎と優斗に任せ、こちらにやって来る男達を眺めながらポーっとしていたアンスズとパースが言う。
「―ったく、一体どんな餓鬼を探してんだか……―って待てって!」
はぁ、と騒がしい外来者に対して嘆息しながら斎は額に手を当て、ふと少年に視線を戻すと、少年は何時の間にかその場にはおらず、男達がいる方向とは正反対の方向へと駆け出していた。
「斎さん!あの怪我、放っておいたら…!」
「分かってる、任しとけ!相手は怪我人だ!ぜってー捕まえてやる!」
優斗に声を掛けられると、斎は軽くウォーミングアップを始め、体がある程度温まると、少年を捕まえる為、駆け出す。



*



「はっ…はっはっ………」
ズキンズキンと怪我の痛みは増すが、それでも少年は、足を止める事はなかった。


― あの時…

廃ビルから飛び降りたあの瞬間
自分の真下に4人の少年が居た事に気が付いた。

― が、既に遅かった

案の定、4人のうち、自分が落下するであろう場所を歩いていた少年2人とぶつかてしまった。
反射的に受身は取ったが、ぶつかった衝撃で、左肩の怪我が開いてしまった。

― 普段なら、そんなミスは犯さないのに…

「― くそっ……」
痛みを増す怪我と、自分自身にイラつく少年。

そんな憤りを感じていると、ふっと体が中に浮く。

「―っ!」
ハッと我に帰った少年は、直ぐ横に視線を移す。
「お前っ…」
視線の先にあったのは、何処か楽しそうに笑みを浮かべている斎だった。
「っ…下ろせ。俺に関わるなっ…」
自分を器用に抱えたまま全力で走る斎。
少年は、そんな斎の腕を外そうと抵抗し始める。
「はっ…!お姫様抱っこされたくなかったら大人しくしてな!」
「―っ…」
その言葉に、思わず斎の腕を引き剥そうとしていた手の力を抜いてしまう少年。
「はっ…はっ………っ…お前っ…」
斎は息を切らしながら、抱えている少年に語りかける。
「とりあえずっ…俺達のホームに連れて行くっ……からな…!」
「…だから、俺に関わるなと言っている。」
斎の言葉を拒む少年ではあったが、少年はその時気が付いた。

― 自分が 何処か安堵感を覚えている事に

それが一体何故なのか
自分でもよく分からない
でも、先程まで張り詰めていたモノが
何時の間にか自分の中からなくなっていた事に気付く

「……………」
「…っ……はっはっ……何だ…?急にっ…大人しくなってよ…!」
斎は、先程まで自分を拒んで抵抗していた少年が急に大人しくなった事に疑問を感じ、チラッと少年を見下ろしながら尋ねる。
「…俺に関わると………」
少年は、そこで言葉を噤む
何処か、悲しげで苦しそうな表情を、ほんの一瞬見せて…。
「………」
しかし、斎はその一瞬を見逃さなかった。
「そういやっ…お前っ………名前はなんつーんだ…!」
何処か重い空気を払い除けるかのように、斎は今まで以上に明るく、勇ましい口調で語りかけた。
「― …朱羅…」
少年は、素直に自分の名前を答える。
「朱羅っ…ね!りょーかい!他にも色々聞きたいけどっ………」
そこで斎は一端言葉を紡ぐのを止め、この地に長年住んでいる者でも知らないような狭い裏路地に入る。
「― まっ…先ずは怪我の治療だな…!」
そう言うと、斎は朱羅を抱え直し、更に速度を上げ、裏路地を一気に駆け抜けた。


+ ACT.01  出会いのとき +  Fin ...

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