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普段から、賑やかという表現は不釣合いだが
住む場所、職、家族 ...
それぞれ理由は違えど、何かを失った者達でごった返している とあるスラム街

そんなスラム街の匂いが今日 違っていた






 ACT.02  お節介な2人






"ホーム"と斎が呼んだ場所に今、朱羅はいる。
外装も内装も古びている家だ。
しかし、何故か中に入ると予想以上に片付いており、物やごみが散乱していなかった。
ホーム内には少年達の姿しか見られないというのに、何故、こんなにも綺麗に保たれているのか…
そんな所が、少々疑問だった。

「― …ってあれ?怪口…さっきより塞がってないか…?治り早くね?」
治療の前に、ひとまず傷の具合を再確認しようと朱羅の肩を見ると、先程見た時より、傷口が塞がっているように思える。
「…気のせいだろ。」
目を丸くし、きょろきょろと色んな角度から傷口を見てくる斎に対し、朱羅は、先程から変わらない冷静な表情で言う。
「そうかぁ?…でもまぁ、此処の治療で何とかなりそうで安心した!」
ニカッと笑顔を見せた斎は、慣れた手つきで治療を始める。
「……………」
「……………」
「…………………」
「…………………」
「………………………」
「………………………」





「…お前、ホント無口なんだな。」
治療に集中していた斎が口を閉ざした途端、その場の空気が若干重くなった様に感じた斎は、治療する手を止めることなく、苦笑を交えながらそんな言葉を口にする。
「俺、こんな空気は堪えらんねぇ…」
自分が話さなければ、その場が静まり返るそんな空間が、斎にとって居心地が悪くて仕方が無かった。

「…有難う」
「― んぁ?」

不意に、朱羅が言葉を紡ぐ。
しかも、予想外の言葉だった為に、斎は間の抜けた声を発する。
「治療、してくれてるだろ」
そう言いながら、朱羅は斎が治療してくれた部分を見る。
「当たり前だろ。怪我、治さねぇと悪化する一方だしな」
第一印象が悪かった朱羅だっただけに、こんな風に素直に感謝の気持ちを口にする姿を見、斎は何故か、とても嬉しく感じた。

「― 初対面の人間に、何故そんなに親切に出来るんだ」
治療が一通り終わり、斎が治療道具を片付けていると、シャツを再び着ながら、朱羅は静かに尋ねる。
「何故…って………」
今までそんな事を考えた事もなかった斎は、朱羅が発した質問に対し、口を噤んでしまった。
「どう見たって俺は厄介者だ。
何者かに追われているんだって事にも、気付いただろう」

確かに、突然で一瞬の出来事ではあったが
今日、見慣れない男達が探していた"餓鬼"が朱羅なのだと、斎が理解するには難しくはなかった。
「ほっとけないじゃんか。目の前で怪我してる奴がいたらさ」
パタンと救急箱の蓋を閉じ、元あった場所に戻した斎は、再び朱羅の目の前に置いてある椅子に腰を下ろす。
「……………」
斎の言葉を聞いた朱羅は、表情を変えることなく、再び口を閉ざす。
「取り敢えず!未だ完治してねぇんだから、完治するまでは此処に………っておい!」
斎が未だ、話している途中だと言うのに、朱羅はその場に立ち上がり、部屋から出て行こうとドアに向かっていた。
「ちょっと待て!」
そんな朱羅の腕を掴み、足を止めさせる斎。
「治療してくれた事には感謝している。でも俺は出て行く」
朱羅は、斎に視線を移しながら、そう答える。
「だから人の話聞け!完治するまでは此処にいろ。いいな!」
「断る。」
「ってお前…」
朱羅は、綺麗な顔に似合わず意外に頑固者だという印象がが、斎の中で芽生え始める。
「・・・これ以上、迷惑は掛けられない。」
そう言うと、朱羅は自分の腕を掴んでいる斎の手を外し、部屋の外に出ようと、ドアノブに手を伸ばす―

「― あれ?何処行くの?」
朱羅がドアを開けるよりも早くドアが開く。
すると、穏やかな声が室内に響き渡る。
「怪我、もう大丈夫?」
「……………」
その声の主を見た朱羅は
一瞬にして、このホームの中に入った時の疑問点を解決する事が出来た。


このホームに…

― いや、
このスラム街ににつかわない・・・
そんな少女が目の前に立っている。

ふわふわとした柔らかく、美しい金髪を腰のあたりまで伸ばし
惹き込まれるような、深く美しい碧色を宿した大きな瞳

そんな少女が、暖かい笑顔で自分を見つめていた。


「瑪瑙、何とか言ってやってくれよぉ…!」
「― え?どうしたの?」
瑪瑙と呼ばれたその少女は
朱羅の後ろから出てくる斎を見上げ、首を傾げる。
「こいつ、治療したら即行出て行くって言うんだよ」
「え…何で?何で出て行っちゃうの?」
「…何故…って…」
朱羅は、純粋な表情で自分の手を握り締めながら尋ねてくる瑪瑙に、戸惑いを隠せない。
「怪我、治るまであまり無理しない方が良いでしょ?だから此処にいて。」
「―っ…!」
自分の頬に伸ばされた瑪瑙の手。
それを、朱羅は反射的に払いのける。
「…あ、ごめんなさい…!」
瑪瑙自身も無意識のうちの行動だったのか、朱羅のその反応を見ると、パッと、繋いでいた手と、朱羅の頬に伸ばした手を元の位置に戻す。
「……………」
朱羅は視線を落とし、口を紡ぐ。
「……………」
そんな朱羅を、斎は無言で見つめる。
「え…っと………とにかく!せめて完治するまでは此処にいて…ね?」
何だか気まずい空気になってしまった為、瑪瑙はその空気を少しでも変えようと明るいトーンで言う。
「だから俺は―」
「お前には、色々聞きたい事もあるしな!」
ポンッと、斎は朱羅の頭に手を乗せ、トーンを若干上げ、声を掛けてきた。

「………お節介なんだな、2人は…」
『よく言われる!』

これ以上自分が何を言っても拉致はあかない。
― そう判断した朱羅は、2人の言う事をひとまず受け入れる事にした。

そんな朱羅を見た斎と瑪瑙は、満面の笑みを、朱羅に向けてくる。


― 何故 他人にこんなに親切に出来るのか…


この頃の朱羅には 分からなかった。


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