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ホーム内では1番広い、リビングに位置付けられるであろうそんな部屋に
10人以上の人間が集まり、ざわついている。

そんな空間の中心にいたのは他でもない
今日から此処の住人となった朱羅だった。






 ACT.03  それぞれの住む世界






「つー事で!今日から俺らの仲間になった朱羅だ。皆、宜しくしてやってくれ」
「……………」
中心に居る朱羅の横には、朱羅を仲間達に紹介する為に斎がいる。
そんな斎は、今までの事の経緯をを皆に説明し、朱羅を仲間に加える事を伝える。
「ほれ、お前からも自己紹介しろって!」
「っ………」
ドンッと、斎は笑いながら朱羅の背中を押す。
「…朱羅です。…宜しく」
ぎこちない挨拶。
斎や瑪瑙の押しに負けた為、2人の指示に従っている朱羅だが、やはり自分はこの場所にいる人間ではない。
・・・そんな思いを持っている朱羅は、普段以上に言葉数が少なくなっている。
そして、そんな挨拶をする朱羅を見る仲間達もまた、喜んで新しい仲間を迎え入れる様な雰囲気ではなかった。
「怪我してるんだったら仕方ないけど…」
1人の少年が、ちらちらと朱羅を見ながら口を開く。
「…コイツ、今日街ん中をうろついてる男達に追われてるって話じゃん」
明らかに、仲間達から見れば、朱羅は"厄介者"だった。
「そんな奴匿ってたら、俺等の命も危ねぇって」
先程言葉を発した少年に続けるように
短髪で背の高い少年が、朱羅を見下ろす様に見つめながら前に出てくる。
「要…」
斎は、その少年の名前を呼ぶと、表情を少し曇らせながら1歩前に出る。
「そもそも、仲間に受け入れるんだったらコイツの事、もっとよく知る必要があるだろーが」
要と呼ばれた少年の意見はもっともだった。
ただでさえ大勢の仲間がいる中、1人増える事で今まで以上に生活が苦しくなる。
そんな中、突然現れた見知らぬ人間を受け入れる事は、決して容易なものではない。
それぞれが同じような事を考えていたせいか、仲間達は、要のその言葉を聞くと、云々と何度も頷いた。

「…だよな。悪いな、皆。無理言っちまって」
先走ってしまった自分が恥ずかしくなり、皆に申し訳なくなり、斎はぽりぽりと頭をかきながら言う。
「先ずは、朱羅が何処から来たのか、って事じゃない?」
眼鏡を掛け、黒髪を後ろで縛った少年が話を切り出す。
「― だな。朱羅、お前、何処から来たんだ?」
斎は近くにあった椅子に腰掛けると、朱羅を見ながら問い掛ける。
「…この街からずっと遠い場所。…それ以上は言えない」
「何だよそれー!」
「答えになってないじゃーん!」
アンスズとパースの声が室内に響き渡る。
「…じゃあ、何の為に此処に来た?」
そんなアンスズとパースを視線で嗜めると、斎は次の質問をする。
「……………」
朱羅は黙ったままだった。
「貴方…あの人達に追われてましたよね…?何故…なんですか?」
少々聞きずらそうに、優斗は朱羅の様子を伺いながら尋ねる。
「……………」
「お黙りかよ。話になんねーな」
要は口を閉ざしたままの朱羅に対し、吐き捨てる様に言う。
「貴方、小さいディスクの様な物、大事そうに持ってましたよね?
あれ…もしかして、関係あるんじゃないんですか?」
優斗は要の放った言葉で更に重くなった空気を少しでも和らげようと、普段以上に優しい口調で朱羅に問い掛ける。
「……あのディスクは、とある組織の内部情報が入った物だ」
優斗が問い掛けてから少々時間はかかったが、やっと、朱羅は話し始める。
「とある組織の…内部情報…?」
途端、周囲の空気が変化を見せる。
「君、もしかして…情報屋?」
1人の少年が、少々興味深げに尋ねてくる。
「…そんなところだ」
「…じゃあじゃあ!何処の組織の情報なの?!」
アンスズが、目を輝かせながら身を乗り出してくる。
「……………BloodyHound」
「BloodyHound…って………嘘…」
キラキラと輝いていたアンスズの表情が、その名前を聞いた途端、強張ってしまった。
周囲の仲間達は勿論の事、斎の表情も急に曇りがかる。

― [ BloodyHound ] ―
この辺り一帯の人間なら、この組織の名前を知らない人間はいない。
それ程名の知られた裏の組織だ。
この街は未だBloodyHoundの統括地となってはいないが、その噂は、否が応でも耳に届く。
BloodyHoundは力ずくで街を次々と統括し続けている組織だ。
少しでも命令に逆らえば命は無い。
自分だけではなく、家族や仲間達が全員、晒し者にされた後、その場で殺される。
そうやって、自分達に逆らった者達を見せしめにする事で、BloodyHoundはその地位を確かなものにしていた。

「いくらなんでも…BloodyHoundはマズイだろ…」
青ざめた表情で、1人の少年は声を震わせながら言葉を発する。
「噂じゃあ…この街にもそろそろアイツ等がやって来るって話だし…」
体が震えているのか、別の少年は両肩を押さえながら独り言の様に呟く。
「…お前、何処の組織に雇われてるんだ?」
斎は怖がり始めている仲間達を見渡すと、それまでの表情とは異なる真剣な表情で朱羅に問い掛ける。
「何処の組織にも雇われてない。1人でやってる」
朱羅もまた、真っ直ぐに斎を見ながら答える。
「冗談言うなよ。あいつ等相手に餓鬼1人が情報盗める訳ねぇだろーが」
要は朱羅を嘲笑するかの様な表情で見下す。
「…信じる信じないはお前達の勝手だ。でも俺は、今までずっと1人で生きてきた」
自分を見下す要に対しても、朱羅は真っ直ぐな瞳で答える。
「はっ…!話になんねぇな!」
そう吐き捨てる様に言うと、要は部屋を出て行ってしまった。
「…朱羅、本当…なんだな?」
斎は至って冷静に、朱羅に尋ねる。
「こんな事で嘘を言って、一体何になる」
斎の質問に対し、朱羅は直ぐにそう答える。
「…そうか………」
未だ出会って間もないが
斎には、朱羅が嘘をつく様な人間にはどうしても思えなかった。

だからこそ、斎の表情が曇ってしまう。

「…だから言っただろ。俺は厄介者なんだって」
斎が、仲間達を第一に考えている事が、朱羅には直ぐに感じ取る事が出来た。
だから今、斎は悩んでいる。
仲間を護るべきか、それとも、仲間を危険に晒してまで、今さっき出会ったお尋ね者を匿うか。


―― そんな事 悩むまでもないのに ――


「― ってちょっと待て…!」
斎が視線を下ろし、悩んでいるうちに、朱羅はホームから出て行ってしまった。
「待てって…待てよ!」
斎は慌てて追いかける様に外に出ると、朱羅の肩を掴んでこちらを向かせる。
「今さっき会った人間と、今までずっと一緒にいた仲間。
どっちを取るかなんて悩むまでもないだろう」
「― っ…」
朱羅は、自分の肩を掴む斎の手を払いながら言う。
「俺は今までずっと一人で生きてきた。これからも一人で生きていく」
それだけ言うと、朱羅は飴色の街の中へと消え去ってしまった。


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