+ ACT.04  握れぬ掌 揺れる想い ( 2/3 ) +
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先程までいたホームやスラムマーケット周辺から外れた路地裏。
人通りも殆どなく、他の場所よりも更に薄暗く、湿っぽい。
そんな場所に、朱羅はいた。

何処に行っても、その場所に住んでいる人達に迷惑がかかる。
だから、何処に行っても同じ事。
でも何故か、此処にはいてはいけないと、朱羅はそう感じていた

今までだって同じ様な事は何度もあった。
場所や人に特別な想いを感じる事もなかった。
それなのに何故、この場所に "いてはいけない" と感じるのか。

斎達に出逢ってから、自分でも説明出来ない不可解な感情が次々と表れてくる。

もどかしく 苦しい
でも 何処か暖かく 懐かしい
そんな感情

でも、もう、斎達とは関わらない。
だから、こんな不可解な感情に悩まされる事も、戸惑う事も無い。
余計な事に時間をかける事も無い。

そう思った朱羅は、その場に立ち上がり、これから自分が取るべき行動を模索し始める。

「離して下さい……!」

朱羅が1歩足を進めたと同時に、そんな少女の声が耳に届いた。

「こーんな可愛いねぇちゃんが、たった1人でこんなトコぶらついてたら危ないよー?」
「そうそう。危ないお兄さん達が放っておかないからねぇ。」
姿を見ずとも、状況は簡単に把握出来、無意識のうちに、朱羅はその声の主達の方へと足を進める。
「止めて下さい!私、人を探してるんです!」
案の定、そこにいたのは瑪瑙と、体格の良い大柄の男が3人おり、華奢な瑪瑙の腕をがっちりと掴み、離さない男が真っ先に視界に入る。
男達の言う通り、ただでさえこんな場所ににつかわない様な少女が、たった1人で街を歩いていればこんな状況になるのは容易に予想が出来た。
朱羅の口から、小さな溜息が漏れる。
「はいはーい。じゃあお兄さん達もその人探してあげるからー」
「仕事代、前払いで宜しくな」
「っ………」
そう言うと、男は舌なめずりをする。
そんな男達の、自分を見る目に、瑪瑙は言葉を失う。


― と 次の瞬間


「その手、離してくれませんか」


「― っ…!」
「あぁ?」


その声の主が誰なのか、瑪瑙には直ぐに分かった。
「朱羅君っ…!」
さっきまで体を微かに震わせていたというのに、朱羅の姿を見た瞬間、瑪瑙の中から恐怖心は消えてなくなっていた。
「聞こえませんでしたか?その手、離して下さい」
コツコツと1歩ずつ、相手の出方を伺いながら、瑪瑙と男達に近付く朱羅。
「何だ、テメェ…」
自分達に盾突く華奢な少年。
体格的にも人数的にも、誰から見ても圧倒的に朱羅の方が不利だった。
そんな、身の程知らずにも程がある朱羅に対し、男達は苛立ちを募らせる。
「テメェ…俺等に喧嘩売ってただで済むと ―――」
1人の男が指の関節を鳴らしながら朱羅に近付き始めた次の瞬間―

― ダァン………!!

その男は、背中から地面に叩き付けられていた。

「あだっ!!」
「朱羅君………」
一瞬の出来事に、その光景を視界の中入れる事しか出来なかった瑪瑙や2人の男達は勿論の事、叩き付けられた本人でさえ、状況を把握出来ていなかったのか、ワンテンポ遅れて背中の痛みに声を上げる。
「やっと手、離してくれましたね」
「いっ…あだだだだ!!」
地面に叩き付けた男の背中を、片膝で更に地面に強く押し付けながら、器用に男の両腕を背中で組み合わせ、ギリギリと締め上げる朱羅。
「つっ…つけあがんじゃねーぞ餓鬼のくせに…!」
やっと状況が理解出来たもう1人の男が、今度はポケットからナイフを取り出し、怒りの感情をそのまま朱羅にぶつけるかのように、勢いよく切り込んで来る。
そんな男の行動を確認すると同時に、朱羅は、両腕を締め上げている男の後頭部に手刀を入れて気絶させると、自分の真正面に突き出されたナイフを避け、男の顎を強打する。
その衝撃が男の脳に揺さ振りをかけたのだろう。
結果的に、男はそのまま昏倒してしまった。
1人ずつ攻撃を仕掛けてきたとは言え、その慣れた身のこなしと、何より、朱羅から感じられる 『異質な空気』 に、残った男は恐怖感を感じ、顔を引き攣らせながら、逃げる様に立ち去って行った。

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