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ホーム朱羅達が戻ると、朝は可哀想な姿だったホームの修復作業が大分済んでおり、
まだ細かな部分の修復は残ってはいるものの
おおまかな部分の修復が完了していた。






 ACT.12  少年達の気持ち






ホームの中に入り、雄藩の準備をしているグループと、修復作業の後片付けをしているグループが目に入る。
その様子を眺めていた朱羅の裾をくいくい引っ張る小さな少年が2人、足元に立っていた。
「この間は僕達の家と瑪瑙を護ってくれてありがとう!」
「ちゃんと御礼、言ってなかったから」
少年達は笑顔で朱羅に礼を言う。
「…いや、俺は別に…」
何処にいたのかわからなかった斎が、不意にひょこっと顔を出す。
「コイツらのあったかい気持ち、無下にするのかー?」
「………どういたしまして」
斎に横槍を入れられ、ひと睨みはしたものの、眩しい笑顔の少年達の望む答えを言えていなかったという自覚のある朱羅は、渋々…ではあったが、目の前にいる少年達に答え直す。
すると、朱羅のその答えに、少年達はわー!と喜ぶ。
「…何故そこで喜ぶんだ…?」
「だって僕達、朱羅兄とお話するの初めてなんだもん!」
「最初はこわーいお兄ちゃんなのかと思ってたけど、ほんとは優しいのかなーって話してたんだー」
「優しいって…」
朱羅は真っ直ぐな少年達の眼差しと笑顔を見、少々気恥ずかしくなってしまう。
「あー!朱羅が照れてるぞー!」
「照れてる照れてるー!可愛いー!」
「朱羅兄可愛いー!」
「……からかうな」
朱羅は斎をギッと睨みつける。
「そんなに照れなくったっていいのになぁ?」
「せっかくの美人が台無しー」
「朱羅兄美人さんなのにもったいなーい」
そんな話で盛り上がっていると、ニーノとキオがやってくる。
「あー朱羅ー!こんなトコでサボってる!」
「今日、ヴァル爺さんとこ行った時の報告書!」
「―ああ。済まない」
"報告書"というのは、その名の通り、今日1日過ごしたことの報告を文章にまとめた物だ。
(仕事のあった者は仕事について書き、休みだったものは報告書と言うより日記のような物になる)
仕事は殆どグループ作業で行うため、仕事を終えて帰って来た後には、そのグループ毎に集まり、1日の報告書を作成するまでが1日の仕事となっている。
まとめた報告書(日記)は全て斎の元に戻され、斎と要で読み、必要な物事は翌日のミーティング内で全員に報告するようになっていた。
報告書は、1人1人の性格、得意分野、苦手分野の把握は勿論、何か些細な事でも悩みがあれば相談出来る機会でもあったのだ。
「ほら!さっさと報告書まとめるぞ!」
「じゃないとご飯食べられないし!」
そう言うとニーノとキオは朱羅の手を掴み、大部屋に連行して行った。
「………」
「…斎兄、嬉しそう!」
「まぁねぇ〜」
「朱羅兄、此処に残ってくれるかなぁ?」
そう言う少年の表情は、少々曇りがかっていた。
「2人は朱羅に此処にいて欲しいか?」
「うん!」
「だって朱羅兄、強いもん!」
「斎兄や要兄みたいに皆を護ってくれると思う!」
少年達はぎゅっと拳を握りながら真っ直ぐな瞳で斎を見上げる。
「そう思ってくれるようになって俺も嬉しいよ」
斎はぽんぽんと2人の頭を撫でる。
「皆もね、朱羅兄と話すようになってきたんだよ」
「昨日の夜も朱羅兄や皆とおしゃべりしたんだー」
にこにこと嬉しそうに語る少年。
「朱羅兄はおしゃべり苦手みたいだけどね、皆のお話一生懸命聞いてくれるの!」
「朱羅っていかにも聞き上手って感じだもんなぁ。…つか、自分の事は話たがらないしなぁ」
「他のお兄ちゃん達が真面目に聞いてくれないお話も、朱羅兄はちゃんと最後まで聞いてくれるの!」
「そっかそっかぁ…いいなぁ…。今度は俺も誘ってくれよな!」
「「うん!」」



*



いつも通りの賑やかな夕飯を終え、片づけが終わると就寝時間までは自由時間となる。
その自由時間の中にはシャワー時間も入れ込まれており、その日一緒に仕事を行ったグループ毎に決められている為、その時間を逃すとシャワーを浴びれなくなってしまう。
水も貴重な為、使用出来る量は決めれている為、グループ内で上手くやりくりしなければならない。

そんなシャワー時間を1番に終えた朱羅は、ぽたぽたと雫の垂れた髪にバスタオルをバサッと載せたままシャワー室を出ると、朱羅よりも3、4歳程幼い少年3人が会話を楽しんでいた。
「あー!朱羅ってばみっともない!」
「…そんなんじゃ風邪引きますって…」
少年達は呆れたように朱羅を見る。
「ったくしゃーねーなぁ」
「ちょっ…」
少年の1人が朱羅の腕を掴むと、ぐいぐいと引っ張りながら大広間に向かい、椅子の前に到着すると、椅子を指差す。
「此処に座って」
「…何故?」
「い い か ら す わ れ」
顔を近付け、朱羅に理解させるように1語1語区切りながら少年は言うと、朱羅は小首を傾げ、怪訝な顔をしながら素直に腰を下ろす。
「朱羅ってほんと生活力ねぇのなぁ」
そう言いながら、少年は朱羅の頭に載っていたタオルで朱羅の髪の毛を拭き始める。
「………自覚はある」
「そんなんで今までどうやって生きてきたんです?」
呆れた表情をしながらも、そう言う少年の表情は柔らかかった。
「……どうにかなるものだから」
「…まぁ、そりゃそううかもだけどさー!」
あははと別の少年が笑いながら朱羅に言う。
今度は、そんな少年達を見ていた朱羅が口を開く。
「…此処のメンバーは皆こんな風に人懐こいのか?」
「元からそういう奴もいるけど、俺なんて此処に来た頃は問題児扱いだったんだぜー」
わしゃわしゃと朱羅の髪を拭く少年が答える。
「そうなんですよ。コイツ、朱羅さん以上にとっつきいくいと言いますか、それ以前の問題だったんです」
「そう言うお前だって似たようなもんだろ。丁寧口調なのにものすっごく協調性がなくて嫌味くさくてさー」
「……とまぁ、朱羅さんが来た頃に俺達、朱羅さんを煙たがってはいたんですけれど…」
「よく思い返すとさ、俺達も似たようなもんだったよなぁって思ったんだよ」
「似たようなもの…?」
「ええ。今の朱羅さんと一緒で、此処に来た頃は問題の多かった者も少なくないんですよ」
「今副リーダーの要だって最初は大荒れだったし」
「それなのに…さ………俺等、アンタに対して失礼な態度取ってたよなって話してたんだ」
「いや、当然だろう。俺にとっては斎や瑪瑙の俺に対する対応の方が理解出来なかった」
「そういう人なんですよ。斎さんも瑪瑙さんも。だからこそ、最初は荒れていた俺達もここまで成長出来たと言うか…」
「俺も最初はこんな所早く出て行きたいって思ってたけど、今ではずっと此処にいたいって思ってる」
「だからさ、アンタも此処にいたいって少しでも思うなら、俺らは歓迎するってことを言いたかったんだよ」
「っ………」
朱羅の目が少しばかり丸くなる。
「…というものありますけど、俺達は貴方のこと、嫌ってはいませんよ、ということです」
「確かに食い分は1人分増えて分け前は減るけどさ、あんたそんな細いのに強いみたいだし」
「…ま!決めるのはアンタなんだけど、俺達はそう思ってるってことで完了!」
朱羅の髪を乾かしていた少年がタオルを取る。
「アンタの髪って細いから、タオルで拭くだけで乾いちまったよ」
「…あ、ありがとう」
B「いやいやいや〜どういたしまして〜」
髪を乾かした少年とは別の少年が我が物顔で朱羅に答える。
「お前じゃねーだろ!」
「あいた!」
「こんな風に賑やかで落ち着かない所ではありますが、もし良ければ…ということで」
少年はにこりと微笑みながら朱羅に言う。
「……そうか……」
朱羅の返答はそれだけだった。


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