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あのひとは

いつだって私の傍にいてくれた






 ACT.25  前に進む為に そして 強くなる為に






深夜1時を回ろうとした時刻に、漸く瑠唯は職務から解放された。
秘書から翌日(…と言っても数時間後のことになってしまうが)のスケジュールの確認を終え、彼は自室へと向かっていた。

「ただいま、朱羅」

自室のドアを開け、中に入ると同時に、瑠唯は挨拶を述べる。
「…お疲れ様です、社長」
瑠唯の挨拶の相手は、室内の中央に配置されている調度品のテーブルで書類のまとめ作業を行っている朱羅だった。
今までPCと書類に向けていた視線を、朱羅は部屋の主である瑠唯に向ける。
「朱羅、"ただいま"と声を掛けられたら、"おかえり"と答えるのが自然じゃないかな?それと、2人きりの時には私を名前で呼ぶ約束だろう?」
「…あ、済みません。まだ慣れていないので…」
朱羅は申し訳なさそうな表情を少し見せると、彼に謝罪する。
「身体の方はどうかな?」
クローゼットに脱いだスーツの上着を掛け、ネクタイも一緒に掛けるとドアを閉め、瑠唯は朱羅の元へ歩み寄る。
「お蔭様で…今日1日で大分回復しました」
自分の隣に腰を下ろす瑠唯に対し、朱羅は無意識に距離を取ろうと離れようとするが…
「んっ………」
朱羅が動くよりも先に、彼の動きを呼んでいた瑠唯は朱羅の腰に腕を回し、引き寄せ、そのまま口付ける。
「っ……ん、っ………はっ……………んぅっ………」
朱羅の唇を器用に開かせ、舌を絡め取り、裏筋や歯列をなぞるような濃厚なキスを交わす瑠唯。
朱羅の頬は僅かに朱色に染まる。
「はぁっ………はっ………はぁ………」
濃厚で長いキスから解放された朱羅は、乱れた呼吸を整えるのに必死だった。
そんな彼を愛おしそうに見つめる瑠唯は、朱羅の髪と頬を撫でると背中に腕を回し、朱羅を抱きしめた。
「…まだ、緊張しているのかな?朱羅」
「…緊張……と言うよりも………」
「"抵抗"、それとも"心の傷"……と言う方が正しいかな…?」
「………」
瑠唯のその言葉に黙ってしまう朱羅。
朱羅から距離を取り、彼の頬に優しく手を添えながら瑠唯は続ける。
「…君の事は全て知ってはいるけれど、君がどんなに辛い思いをしてきたのか………それは、君自身にはなれない私には計り知れない」
「…いえ。社――瑠唯…さんご自身も辛い経験を数多くしてきているのですから…」
「それでも私には瑠架…妹がいつも傍にいてくれた。でも、君の傍には誰もいなかっただろう……?」
「……………」
「それどころか、君の傍にいた良き理解者は…君の姉さんや兄さんに無残にも殺されてしまったのだから………」
そう語る瑠唯の表情が曇る。
「…でも、だからと言って、私は同情心で君を想っているのではない。それだけはわかっていて欲しい」
朱羅の顎にそっと手を添え、軽く上を、自分を見つめさせる瑠唯。

「私は、心から君を想い、愛している」

「………瑠唯さん………」
朱羅は真っ直ぐに自分を見つめる瑠唯の強い眼差しに、自分の心が揺らぐのを感じた。
「そして君も、私を想ってくれているのだと……先日、そう言ってくれたね…?」
瑠唯は優しく微笑み、確認するように問う。
「……瑠唯さんは、俺の全てを知っても尚、こうやって……優しく…接して下さる方………だから………」
「………」
無言のまま、朱羅の頬に添えた手を優しく撫でる瑠唯。
「最初はモルモットとしての興味だけだと思っていました。…それに俺は…誰かに好意を抱いてもらえるような存在ではないから………」
「君は、自分に対する敵意には鋭く、受け入れるのも上手だけれど、自分に対する好意には不慣れで下手だからね」
瑠唯はくすりと微笑み、朱羅の頬に軽くキスをする。
「…そう、わかってはいても………多分、俺は嬉しかったのだと思います…。瑠唯さんが俺を理解し、受け入れ、想ってくれているのだという事が………」
「…君は、その年齢で抱えきれるようなものではない辛い思いも沢山してきている……。だから私は、君の傍にいたい…君を幸せにしたい………」
そう言うと、瑠唯は再び優しく朱羅を抱きしめる。
「……………幸せになる資格が、俺にはあるとは思えません………」
「………朱羅………」
朱羅のその答えに、瑠唯は腕を離し、距離を取って朱羅を見つめるが、その表情は曇りがかり、悲しげなものだった。
「………それでも俺は………貴方の傍にいたいと………そう、思っているのだと思います………」
そう続ける朱羅の表情もまた、普段の無表情な顔色とは少し異なり、悲しげで朧げで…自分の幸せを願えない自分が大切な人の傍にいても良いのか悩みながらも、自分の本心からは逃れられないという現実に、辛そうでもあった。
「……今はそれでもいいよ、朱羅…。―でも………」
「ん………」
瑠唯は再び、朱羅に口付け、離し、そして続けた。

「何れ君は、自分の幸せを願える子になれるよ。きっと……いや、必ず……ね」

朱羅の額に自分の額を合わせ、瑠唯は優しく微笑む。
「………そう……なのでしょうか………」
彼の確信を得た言葉に、未だ自分自身が確信を得られていない朱羅は、少々困惑する。
「ああ。そうだよ、朱羅」
にっこり微笑み、瑠唯は即答する。
「………」
「…ふふ。だから"何れ"と言っただろう?すぐにはきっと分からないさ。自分に厳し過ぎる朱羅にはね」
「あっ…」
小首を傾げる朱羅をそのままソファーに押し倒し、瑠唯は朱羅の首筋に口付ける。
「っ………あ、のっ………」
「…ん……?」
自分の服の中に手を入れ、弄りながら首筋にキスを落とし、舐めとる瑠唯に困惑しながら朱羅は続ける。
「まだっ………書類まとめが終わっていなっ……ぁっ………」
ピクンと体を反応させ、か細くも甘美な声を響かせる朱羅。
「…こちらの方が、書類まとめよりも重要な君の仕事だよ…?朱羅………」
「はっ……あっ………」
朱羅の性感帯である耳を執拗に舐め、甘噛みし、朱羅を煽る瑠唯。
「…それに、その仕事は君を私のこの部屋で1日過ごさせるための口実でしかないからね…」
「1日っ……過ごさせる………?」
「ああ。私が仕事から帰って来た時、君の香りで満たされた自分の部屋で、愛しい君が私を待っていてくれるだなんて………私にとって最高のご褒美だからね………」
そう答える瑠唯は、朱羅のベルトを外し、朱羅の性器の先に軽く触れる。
「ぁっ………!」
今までよりも更に大きく身体を反応させる朱羅。
反射的に自分の性器に触れる彼の手を払おうと、朱羅の右手が動くが―
「…駄目だよ朱羅。君の中に性欲が蓄積しないよう、定期的に性行為をしなければならないと、そう教えただろう?」
「でっ………すが、今夜、だなんてっ……」
自分の性器を舐め上げ、指で器用に先端を弄りながら煽り続ける瑠唯を止めようと朱羅は更に腕を伸ばすが、その手を止められ、握られたまま、瑠唯の手と意志によって朱羅の手は自身の性器を弄り始める。
「…君に自慰を教えたくはないけれど……たまにはこういうのもいいだろうと思ってね…」
自分の意志と反し、少しずつ溢れてくるカウパーを、自分の性器に自分の指で馴染ませながら弄る行為は、生まれながらに高い自尊心を持つ朱羅にとって、例え相手が想い人であってもそう簡単には受け入れられない行為だった。
「っ………!」
「―っ…と………」
朱羅は自分の手を握る瑠唯の手を振り払い、ソファーから降りると、瑠唯から距離を取り、乱れた衣服を直し、彼を見る。
「…済まない。君を見ていると興奮してきてしまってね……。早く感じている君が見たくて先走ってしまったようだ……」
瑠唯は申し訳なさそうに謝罪する。
「………そういう………行為は………」
朱羅はそこで言葉を濁らせる。
「自慰行為は嫌かい?自分が淫乱だと思ってしまうから……かな?」
「っ………」
「…君は性欲の強い種族の血を持っているのだから仕方のない事なんだよ、朱羅。それを否定し続ける事は、君の心身への負担になってしまう」
「………」
それでも朱羅の表情は変わらない。
「……擬似的でも、自慰行為に浸る君を見てみたいと思ってしまった私が良くなかったんだよ。だから朱羅、君は淫乱ではない」
「……………………済みません………」
「…朱羅?」
予想外の朱羅の言葉に、瑠唯は思わず目を丸くしてしまう。
「…社――瑠唯さんは、俺の身体を気遣ってこういう事、して下さっているのに………」
「朱羅、それは違うよ」
「…え?」
朱羅が顔を上げると、自分の目の前に、先程まで少々離れたソファーに腰を掛けていた瑠唯が立っており、その場で膝を曲げると、朱羅をそっと抱きしめた。
「確かに、キリス種族の血を宿す君の身体を心配している事は確かだけれど、私が君にこういう事をするのは、もっともっと単純な事なんだよ?」
「……単純な事……」
「本当に、わからないかい?」
瑠唯は朱羅を抱きしめていた腕を解き、朱羅の目をまっすぐに見つめ、言う。
「私が、君を愛しているからなんだよ、朱羅」
「………愛……して………」
真っ直ぐで深い色を見せる瑠唯の瞳から、僅かにでも朱羅は視線を外すことが出来なかった。
「愛する人ともっと親密になりたい……もっと相手を感じたいと思う事は極々自然な事であり、当然の事だろう?」
瑠唯は優しく朱羅の頭を撫で、優しく微笑む。
「………」
「私が先走ってしまって、君に不快な思いをさせてしまった事は謝るよ………済まない、朱羅。…でも………」
朱羅の頬に手を添え、まるで懇願するかの様な表情を見せる瑠唯は告げる―
「それほどまでに私は君を愛し、君を求めているんだ……朱羅……」
そう言うと、瑠唯は深く口付けた。

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