+ ACT.30  見える本意と見えざる本意 ( 3/4 ) +
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「―朱羅。やはり君を外に出すべきではなかったんだ」
「瑠唯さん、俺は―」
「君を、あんな劣等種達の元へは戻さない―」
「いっ………!」
瑠唯はそう自分に言い聞かせるように言うと、朱羅の首筋に勢いよく噛みついた。
そのまま素早く朱羅の両手を片手で纏め上げると、朱羅の服の中に空いている片手を滑り込ませた。
身を捩らせて抵抗をするが、長身の瑠唯に上から覆い被されている朱羅のそれは、殆ど意味を為してはいなかった。寧ろ、その行動が逆効果となってしまう、瑠唯の加虐心や興奮を煽ってしまったようだ。
朱羅の身体をねっとりと蛇が這うように指を―手を滑らせ、朱羅の僅かな震えや反応を愉しみ、自分の中の滾りを増加させているような彼の姿がそれを物語っていた。
朱羅の胸の飾りを優しく摘まんだり、時にきつく摘まみ上げたりしながら刺激を与え、ビクビクと震える朱羅の身体に舌を這わせ、その手はするすると下へと移動し、朱羅の脇腹を触れ、腰骨を執拗に撫でていた。
「や、め…―んぅっ………」
キリス種族特有の強い性欲を煽らようとも自制心を手放さないよう自我を何とか保とうとする幼い朱羅の抵抗に、瑠唯は益々興奮し、抵抗の言葉を紡ごうとする彼の唇を強引に塞いだ。
舌を割って朱羅の舌に自分の舌を絡ませ、濃厚な口付を続けながら、瑠唯の手は器用に朱羅のズボンのボタンを外し、ファスナーを下ろすと下着と共に一気に下ろした。
「はっ…!はっ……はぁっ……………は、………瑠唯、さんっ………」
実際に口付けられていた時間はそこまで長くはなかったのだろうが、呼吸さえ許さない程強引で濃厚な口付を与えられた朱羅の意識は朦朧とし、思考が上手く働かない。
「このままの体勢だと動きにくいな……」
朱羅のことは構わずにそう呟くと、瑠唯は一度、露わにした朱羅の性器から手を離し、ソファーの下に手を伸ばして何かを手に取ると、ジャラ…という重い金属同士の擦れ合う音が室内に響いた。
「君の美しい身体に跡が残ってはいけないからね。この手錠の裏側には特殊な素材で出来た柔らかな素材で覆ってあるから跡は残らないで済むから安心して欲しい」
光のない瞳でそう微笑みながら瑠唯は朱羅に語り掛けると朱羅の両手にその手錠を嵌め、朱羅の行動を制限する。朱羅の自由を奪った手錠の先には重みのある鎖が伸びており、その鎖はソファーの脚へと括り付けられていた為、瑠唯の両手は自由となった。
「…瑠唯さん。どんなに貴方が俺をこんな形で拘束しても…俺の心はもう、貴方の元にはありません」
「…そうか……」
目を細めたまま、自分を真っ直ぐ見つめてそう話す朱羅を見下ろしながら、瑠唯は服の上から朱羅の心臓付近に手を乗せる。
「―それならば、昔の朱羅に戻るよう"治療"するまでだ」
凍てついた目で朱羅を見下ろしながらそう答えた瑠唯が指を鳴らすとドアの前に立っているSPが静かに入って来た。そして無言のまま手に持っている小さな箱を一礼しながら瑠唯に渡すと、再びこの部屋を後にした。
「………」
瑠唯がその箱を開け、中から透明な液体の入った小さな試験管と注射器を取り出す様子を、朱羅は黙って見つめていた。
「これは君の"病気"を治す治療薬だから安心しなさい」
瑠唯は柔和な笑みを見せながら試験管に注射器の針を差し入れ、中に入っている液体を注射器へと移す。
「治すと言っても一時的なものだから、私達のAsuraに戻ったらきちんと治療するからね、朱羅。だからもう大丈夫だ。元の君に戻れる」
朱羅に語りかけているのか自己暗示をかけているのか…瑠唯はブツブツと低く静かな声でそう言葉を発すると注射器の押子に指を沿え、少し押してからそのまま針を朱羅の首筋に近付ける―
「そんなことをすれば…本当に、俺の心は2度と貴方のものにはならなくなります」
朱羅はあくまで冷静に、静かにそう語り掛ける。
「………」
朱羅のその言葉を聞いた瑠唯の手が止まる。
「薬で俺を洗脳すれば、貴方は自分自身の力で俺の心を取り戻せないと負けを認めたことになります」
「………」
瑠唯は冷静なまま自分の双眼を真っ直ぐに見つめ続ける菫を見つめ返す。
「……こんなことを言うのは、本当に俺の身勝手なことだという自覚はあります…今更何を言うのかと………」
少しの間視線を落とし、眉を僅かに顰める朱羅だったが、直ぐに視線を戻し、瑠唯の目を見つめて続ける―

「でも俺は………貴方のことを…瑠唯さんのことを、心から嫌いにはなりたくないんです」

そう話す朱羅の表情は、今まで見せていた冷静で変化のない表情ではなく、切なげで苦しげで、懇願の色が載せられていた。
「………朱羅………」
瑠唯は静かに朱羅の頬に触れる。
「…貴方がいなければ俺はきっと、もう既にキリスの血に喰われていたと思います。自分の中に流れる穢れた血のこともよくわからず、自分自身の保ち方もわからないまま自分を見失い、"ヒト"を保てないまま………。でも、それを教えてくれたのは瑠唯さん……貴方なんです」
朱羅は自分の頬に添える彼を真っ直ぐに見つめ続ける。
「貴方は俺に、"俺自身のまま"生きていく術を教えてくれました。……そして、心身共にボロボロになっていた俺を………愛してくれた………」
瑠唯の手に添えた自分の手に少し力を込め、朱羅は続けたー
「だから………貴方は俺にとって特別な人なんです…」
「………そうか………」
瑠唯は静かに微笑み、朱羅の額にそっとキスを落とし、再び朱羅を見つめると続けた―

「―だったら、私が君の"特別"なのだとう言うのなら、君はやはり私だけのものなんだよ、朱羅―」
「―あっ…!」

瑠唯の瞳に翳が堕ちた瞬間、朱羅の秘所に勢い良く瑠唯の長い指が挿入される。
「―ああ、良かった…。此処はキツイままだね………」
「はっ…ぁ、……や、めっ………!」
朱羅の中に挿入されている彼の指が1本から2本になり、容赦のない抜き挿しが繰り返される度にぬちぬちと淫靡な音が朱羅の耳に入り、朱羅の羞恥心が増していく。
「ぁ―っ………ふぁっ……!」
何度も執拗な指の挿入を強いられていたが、唐突に勢い良く指が抜き取られ、朱羅の身体が大きく跳ねる。
「私の可愛い可愛い朱羅………愛しくて愛しくてたまらない私の朱羅………」
「や、―っ………ぁっ……………!」
瑠唯は抜いた自分の指を綺麗に舐めると朱羅の腰に手を添え、そのまま朱羅の身体をうつ伏せにし、手早く腰を浮かせると、滾り続けている自分の性器を素早く露にし、朱羅の秘所に勢い良く挿入した。
彼の指による前戯で慣らされていたとは言え、朱羅と瑠唯の体格差から見れば彼の滾った性器の挿入は痛みを生じさせてしまうことは容易に予測は出来たが、それでも瑠唯は自分の欲望を小柄で華奢な朱羅にぶつけ続ける。
「はっ………は、……朱羅、っ…………、朱羅っ………!」
「ふっ……―んくっ………」
瑠唯が朱羅に覆い被さった形で激しく突く度にソファーは軋み、声を抑えようとソファーに顔を埋め、彼から与えられる行為に耐える朱羅。
瑠唯の猛りに呼応するかのように次第に突く速度が上がり、深くなり、華奢な朱羅の身体が大きく揺さぶられ、脚や膝がガクガクと震え始めるが、それでも瑠唯の朱羅に対する感情や性欲は収まるどころか増していき、朱羅の意識も次第に霞がかっていく。
そうして何度も朱羅を突く瑠唯だったが、自分の衝動を抑えきれない彼の手が朱羅の性器にするりと伸び、後ろから突きながら彼の性器を愛撫し始める。亀頭を中心に手で覆い、指先で何度も刺激し、射精を促しながら裏筋も指で何度もなぞった後、陰嚢を指の腹で転がしたり擦りながら瑠唯は朱羅を快楽へと誘う。
「はっ……はぁっ………朱羅っ………」
「や、…めっ………ぁあっ………」
生理的なものなのか、それとも朱羅の心の悲しみなのか…揺さぶられながら朱羅の頬に涙の雫が落ちる。
「大っ………丈夫だよ、朱羅、っ………はっ……………すぐに、っ………よくなる………」
瑠唯が朱羅に背後から覆い被さりながら彼の頬を伝う雫を舐め取り、頬にキスをした瞬間―
「ふ、ぁっ………!」
後ろから挿入したまま、瑠唯の欲望が朱羅の中へと打ち放たれた。
ドクドクと朱羅の中に浸入する瑠唯の欲望という名の性液は止まらず、今まで我慢をし続けてきた朱羅への異常なまでの愛情を物語っていた。
そのまま射精が落ち着くまで朱羅の中に挿入し、愛しい朱羅を背後からきつく抱きしめ、汗ばむ彼の身体を何度も弄り、舐め、匂いを嗅ぎ、彼を堪能していた瑠唯だったが、落ち着いた頃に自分の性器を抜き、朱羅を解放した。
「…薬、よりも、……はっ……は、……はぁ…………私の性液の方が余程君に伝わると思うんだ………朱羅………」
瑠唯が解放したことにより支えのなくなった朱羅の華奢な身体はくた…と力尽き、ソファーの上にうつ伏せのまま崩れた。朱羅の秘所からは中に入りきらなかった性液が太股を伝い、ソファーの上に零れ落ちる。
瑠唯は、そんな自分の欲望を注ぎ込んだ朱羅の秘所を確認すると太股の付け根付近の内側にキスをし、手錠を外すと、朱羅の身体をゆっくりと回転させ、自分から朱羅の顔が見えるよう仰向けにし、自分の両腕に抱いた。
「………ああ………私の可愛く愛しい朱羅…………君は何も悪くないんだ………。全ては君を"病気"にさせたあの劣等種達が悪いのだから………」
「ん、ぅっ………」
自分の腕の中で息を整えている朱羅を恍惚な表情で見つめると、瑠唯は自分の唇で朱羅の唇を塞ぐ。瑠唯の突然で強引な性行為によって朱羅の体力は奪われ、意識も朦朧としている為、彼の口付けに対し朱羅は抵抗が出来なかった。瑠唯は朱羅の唇を啄ばむ様に何度も口付けた後、舌を絡め取るような濃厚なキスを続けた。
数分間に渡るキスの後、瑠唯は朱羅の唇を解放する。執拗な口付けにより、朱羅の体力は更に奪われ、益々身体は気だるく重く、思考も思うように働かない。
「…さぁ、朱羅………私達の家へ帰ろうか…」
目を細め、にっこりと微笑みながら静かにそう言う瑠唯は1度、朱羅を抱き抱えていた手を離し、自分の脚で朱羅の身体を支えると自分の下着を直し、ズボンをきちんと穿いてベルトをすると、朱羅の服を下げ、彼の身体に自分のスーツの上着をそっと乗せ、再び朱羅を抱き抱えた。
「………い………き、ません………」
「…ん?」
朱羅は自分を抱き抱え、その場に立ち上がる瑠唯に対し、上手く働かない思考を何とか働かせて瑠唯の誘いを拒否する言葉を発し、片手で自分の身体を支えている彼の手を離そうと掴み、力を込める。
「俺……は、Asuraには………貴方の元には………戻りません」
眉を顰め、瑠唯に分かりやすい拒否の行動を取る朱羅。
「………朱羅。Asuraできちんと治療をすれば、君も自分自身のいるべき場所…いるべき存在にきちんと気付くようになるから何も恐れることはないんだ。大丈夫。私が君の"病気"を必ず治してあげるから」
目を細め、朱羅の"病気"を案じ、瑠唯は困ったような哀れむような笑みを浮かべながら朱羅に答える。
「さぁ、帰ろう…朱羅…」
そう言って朱羅を抱き抱えたまま瑠唯は脚をドアへと進ませたその時、不意にドアが開いた。

「兄さん。仕事をサボって朱羅とSEXですか」

恥ずかしげもなくそう言葉を発したのは瑠架だった。
「瑠架。大丈夫だよ。スケジュールは調整してある。それに、仕事などよりも朱羅の方が比べられないほど大切なものだからね」
妹に指摘を受けながらも瑠唯は謝罪の色は一切見せずに穏やかな笑みを浮かべながらそう答えた。瑠架はそんな兄を細めた目で見つめると、兄の腕に抱かれた朱羅に視線を移す。
「随分と無理をさせたようですね、兄さん」
「無理などさせてはいないさ。これも"治療"の一環なのだから」
「兄さん。私は今まで兄さんへの感謝の気持ちがあり、干渉せずにいましたが、最近の兄さんの言動は目に余ります」
瑠架は表情も声のトーンも変えず、朱羅から兄に再び視線を戻しながら淡々と語る。
「私は別に兄さんに正しいと思うことをして欲しいなどと思ってはいません。ですが、実の兄だからこそこうやって口を挟んでいるんです。今の兄さんは見ていて痛々しく、酷く哀れだ」
「瑠架…。私は痛々しくとも哀れでもいいんだ。朱羅さえ元に戻れば………」
瑠架の言葉に迷うことなくふっと微笑み、瑠唯は言う。
「兄さん。朱羅を渡してください」
「何故だい?」
唐突な瑠架の言葉に、それまで見せていた瑠唯の微笑みは消え、彼女の本意を知るべく彼は問い返す。
「もう戻らないと何度も口にする朱羅を無理矢理連れ帰ってどうするつもりなのですか?洗脳でもするつもりなのですか?」
「…そうだね。本意ではないけれど、朱羅の"病気"が私の治療でも治らなかったとしたら…それも在り得るね」
「っ………離してください………!」
「―っと、朱羅………!」
朱羅は瑠唯の言葉を聞き、今まで以上の抵抗を見せる。
言う事の聞かない身体に鞭を打ち、今出せる最大限の力を込めて瑠唯の腕から降りようともがいた朱羅は、上手く瑠唯の腕から離れることは出来た。だが、強引に腕を解いた為、朱羅の身体が床に衝突してしまう体勢で彼の腕から落ちる。
そんな、朱羅の身体を床との衝突から防いだのは瑠架だった。
朱羅の身体が床にぶつかる前に、無言のまま両腕で朱羅の華奢な身体を抱き抱え、静かに床に下ろす。
「こんな状態の朱羅を迎え入れ、洗脳まですることになった場合、1番苦しむのは兄さんだと言うのに…」
瑠架はそう呟きながら朱羅の身体から落ちた瑠唯の上着を朱羅の身体に再び乗せると、瑠唯を見上げる。
「兄さん。朱羅を取り戻すとしても、それは今ではないと私は考えます」
「瑠架………」
瑠架の言葉に、瑠唯は哀しげな表情を見せる。
「兄さんがそんなことをすれば、兄さんが本当に望んでいる、朱羅の意思で兄さんを想っていたあの頃にはもう2度と戻れなくなりますが、それでも構わないと?」
「………」
「どんな状態でも手に入れられればそれでいいだなんて、兄さんらしくありません」
瑠架は冷静で静かな口調で瑠唯にそう言うと、朱羅を抱き上げた。
「朱羅は私が送り届ます」
それだけ言うと瑠架は、黙り、立ちつくす瑠唯に背を向け、部屋を後にした。
「お前達は兄さんを頼む」
「あ………はい。承知しました」
ドアの前に立っていた2人のSPは瑠架の命を聞き、素直に受け入れ、その場を立ち去る彼女に一礼する。
「………瑠架さん………」
「礼は要らないよ、朱羅。君の為にしたことではないのだから」
瑠架は自分の腕の中で朱羅が言わんとすることを直ぐに予測し、答える。
「あれでも私の実兄だからね。哀れで惨めな男だとしてもある程度の情けは掛けるさ」
「………」
「ああ…朱羅。君の中にある兄さんのザーメン、私が処理してあげようか?」
瑠架は躊躇することも恥じることもなく、唐突にそんな話を持ち掛ける。
「…いえ、大丈夫です。自分で処理します………」
「それは、ホームでするつもりなのか?」
「………」
「一応君には多少なりとも悪いとは思ってはいるんだ。だから私の部屋のシャワールームを使うといい。それに、少し身体を休めないと、そのままで帰っては仲間に心配を掛けるだろう」
「……………ありがとうございます…」
少しの間逡巡した朱羅だったが、瑠架の言葉に甘えることにしたようだった。
「何か暖かい紅茶でも淹れよう。それを飲めばきっと普段よりは眠れる筈だ」
「………」
「安心しなさい。可笑しな薬は入れない。それに、君はAsuraに、否、今の兄さんの傍にいてはいけないからね。だから、私がきちんとホームに送り届ける」
「………ありがとうございます…」
瑠架は瑠唯以上に何を考えているのかわからない部分は大きかったが、彼女の自分に対する感情は兄である瑠唯とは異なり、少なくとも"異常"と思えるようなものを感じられず、かと言って、自分の兄がしでかしたことに対する心からの謝罪や罪悪感に駆られて…と言った善意からくるものではないが、少なくとも嫌悪感を持たれている様子もなかった為、朱羅は瑠架の申し出を素直に受け取ることにした。

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